天然香料の魅力とその製造法 – SHOLAYERED スキップしてコンテンツに移動する

ジャーナル

JOURNAL

2024.11.01

天然香料の魅力とその製造法

香りの世界には、古代から受け継がれてきた天然香料が欠かせません。植物や花、時には樹脂などから丁寧に抽出されるその香りは、人工香料では再現できない深みと温かみがあります。今回は、その天然香料がどのように作られるかをご紹介します。


1. 水蒸気蒸留法:香りのエッセンスを引き出す

ラベンダーやローズなど、多くの植物は「水蒸気蒸留法」という方法で精油(エッセンシャルオイル)に変わります。植物を加熱して蒸気とともに香り成分を取り出し、冷却することで油分として香料を得るのです。水蒸気蒸留は、香りを損なうことなく抽出できるため、精油を扱う人々には欠かせない方法となっています。



2. 溶剤抽出法:繊細な花々のために

ジャスミンやチュベローズなど、熱に弱く繊細な花々には「溶剤抽出法」が使われます。植物を溶剤に浸して香りを溶かし出し、最終的に「アブソリュート」と呼ばれる濃厚な香料に仕上げます。この方法で得られる香りは、まるで花がそのまま存在しているかのような濃密さと複雑さを感じさせてくれます。

 


3. 圧搾法:柑橘系の香りをそのままに

オレンジやレモンなど、柑橘系の香りは、果皮をそのまま「圧搾」して抽出します。圧搾法はシンプルでありながら、果物のフレッシュな香りをそのまま引き出すことができるのが特徴です。香りが失われることなく、まるで果物をそのまま切ったような瑞々しい香りが得られます。



4. 浸漬法:古代からの手仕事

古代エジプトなどで使われた「浸漬法」は、香りのエッセンスをじっくりと油に移す手法です。花や樹脂を油脂に漬け込み、香りを油脂にゆっくりと吸収させていくという昔ながらの方法です。時間がかかるものの、柔らかく奥行きのある香りが得られるため、希少な香料として特別な場面で使われています。


5. 超臨界二酸化炭素抽出法:現代技術の結晶

最新の技術である「超臨界二酸化炭素抽出法」では、低温・高圧で二酸化炭素を使い、純度の高い香り成分を取り出します。これにより、植物が持つ香りを壊さずに、そのまま閉じ込めたような香料ができるのです。高品質な香りを求める現代の香料業界では、こうした技術も取り入れられています。



香りを作るということ

天然香料は、植物の性質や香りの特徴を考慮して、最適な方法で丁寧に作られます。そのため、一本の香水の中には、自然と科学が織りなす繊細なバランスが詰まっています。歴史を超えて受け継がれる香りを楽しむとき、そこに込められた職人の技と自然の恵みに思いを馳せてみるのも、また一興かもしれません。

 

 

 







SHO ISHIZAKA/石坂将
フレグランスプロデューサー/株式会社セントネーションズ 代表取締役。
1982年生まれ。学習院大学卒業後、英国ランカスター大学大学院にて修士課程を修了。帰国後フレグランス業界に従事し、数多くの商品をプロデュース。2010年にはプロデュース商品が日本フレグランス大賞を受賞。2012年1月にフレグランスメーカー「セントネーションズ」を設立以降、オリジナルブランド「ショーレイヤード」の企画・開発のほか、独自のネットワークの強みを生かし、あらゆるコンテンツとフレグランスを掛け合わせ、数多くの著名人やスポーツ選手、ブランドとのプロデュース商品を手がける。