好きな人の香りをそっと知りたい。けれど、あからさまに尋ねるのは少し恥ずかしくて、どこか特別な関係にあるわけでもない今、どうやってその人の香りに近づけるか、慎重になってしまう。香りは見えないけれど、親密さや相手の個性を感じる小さなシグナルのようなもの。香りを通じて、少しだけその人のことを知れたらと思う瞬間があるものです。
まずは、何気ない会話の中で自然に話題を広げてみるのも一つの方法です。例えば、ふと「最近、香水を探しているんだけど、いい香りってどんなのだろう?」とつぶやいてみる。香りにまつわる会話は、どこか日常的でありながら、個性や感覚が現れる領域です。もし、相手が自分の使っている香りについて話してくれたら、少しだけその人の雰囲気や価値観が見えてくるかもしれません。何気ない一言が、相手の香りをさりげなく知るきっかけになるのです。
それでも、好きな人の香りがふっと漂ってきたとき、「いい香りだね」と褒めてみるのも素敵なアプローチです。香りを褒めることは、その人自身の存在を優しく認めることに近く、言葉を通して相手に安心感を伝えることができます。「この香り、すごく心地いいね」とさりげなく言葉にしてみる。すると、もしかしたら「ありがとう」と言いながら、その香りの名前を教えてくれるかもしれません。こうして、香りがもたらす柔らかな会話の流れに身を委ねることで、少しずつ距離を縮めていくのです。
また、香りの話題を自然に持ち出すために、プレゼントやイベントの話をしてみるのも良い方法です。たとえば、「誕生日に香水を贈るなら、どんな香りがいいかな?」と問いかけることで、相手が香りについて語りやすくなる場を作るのです。相手がふと自分の香りの好みを教えてくれたり、使っている香りの話をしてくれたりするかもしれません。このように少しずつ相手の香りに触れる機会が増えると、香りを知るだけでなく、相手との距離も少しずつ近づいていく感覚を味わえるでしょう。
もし気軽にショッピングの話題ができる関係であれば、香水やアロマを一緒に楽しむのも良い方法です。ショッピング中に香りを試すことで、お互いの好みや反応が見えてきます。「こういう香りって好き?」と軽く尋ねたり、一緒に香水の試しをしたりすると、相手が普段どんな香りに惹かれているのか、自然に知ることができるでしょう。日常の中で香りを通して気持ちを共有することで、香りが心の距離をつなぐ手助けをしてくれるのです。
最後に、自分の香りの話をそっと話題にしてみるのも一つの方法です。「最近、香水を変えたんだ」とか「気分が良くなる香りを探してる」と話すことで、相手が香りについて自然に話しやすくなる雰囲気を作ることができます。自分から香りの話題を振ることで、相手も自分の香りのことを話したり、好きな香りについて教えてくれたりするかもしれません。こうしたさりげない会話の中で、香りが二人の間に穏やかな空気をもたらし、自然な形で相手の香りを知ることができるのです。
香りを通して相手を知ることは、言葉では言い尽くせない小さな親密さの一歩です。香りという見えない存在が、心と心の間にひそやかに橋を架け、距離を縮めてくれることもあります。自然な会話と柔らかな雰囲気の中で、少しずつ相手の香りに触れていくことで、あなたの心にも相手の存在が少しずつ香り立つように感じられることでしょう。
1982年生まれ。学習院大学卒業後、英国ランカスター大学大学院にて修士課程を修了。帰国後フレグランス業界に従事し、数多くの商品をプロデュース。2010年にはプロデュース商品が日本フレグランス大賞を受賞。2012年1月にフレグランスメーカー「セントネーションズ」を設立以降、オリジナルブランド「ショーレイヤード」の企画・開発のほか、独自のネットワークの強みを生かし、あらゆるコンテンツとフレグランスを掛け合わせ、数多くの著名人やスポーツ選手、ブランドとのプロデュース商品を手がける。