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2025.02.28

香りと余韻 ― 記憶に残る人になるために

人は視覚の生き物だと言われるけれど、時に、心の奥深くに刻まれるのは、目に映るものではなく、ふとした瞬間に漂う香りだったりする。

たとえば、すれ違った誰かがまとっていた香りが、遠い記憶を呼び覚ますことがある。あるいは、特別な人の残り香が、まるで言葉よりも雄弁に、その人の存在を思い出させることもあるだろう。香りとは、視線や言葉を超えて、人と人を結びつける静かな力を秘めているものだ。

だからこそ、「モテる香り」とは単に流行の香水を纏うことではない。それは、香りを通して、自分自身の印象をそっと相手の心に残す術を知ることだ。

 

香りが生み出す記憶の魔法
香りは、不思議なほどに感情を揺さぶる力を持っている。心理学の研究によれば、嗅覚は脳の「感情」と「記憶」を司る部分に最も近い感覚であるという。だからこそ、香りを纏うことは、単なる「香りの演出」ではなく、「記憶の演出」でもあるのだ。

一度、心地よい香りの余韻を残したなら、それはまるで旋律のように、その人の記憶の片隅で静かに響き続ける。

香水をつけるという行為は、自分の存在を記憶に刻むための、極めて繊細な芸術なのかもしれない。

 

どんな香りが、人を惹きつけるのか
万人に好かれる香りというものは、実のところ存在しない。しかし、香りの系統には、人の心を自然と引きつけるものがある。

清らかで透明感のある香り
シトラスやグリーンティーのように、軽やかで清潔感のある香りは、親しみやすく好感度が高い。朝の光が差し込むような清々しさがあり、さりげなく纏うことで、洗練された印象を与える。


  • 穏やかで包み込むような香り
    ムスクやバニラの柔らかい甘さは、安心感と親しみやすさを醸し出す。まるで、そっと触れたくなるような、温もりのある存在感を演出できる香りだ。

  • 奥行きのあるミステリアスな香り
    ウッディやスパイシーの香りは、知的で深みのある印象を与える。すべてを見せるのではなく、余白を残すような香りは、どこか惹きつけられる余韻を持っている。

  • 静かに漂う官能的な香り
    アンバーやレザーの香りは、夜の帳が降りるような静かな色気をもたらす。強く主張するのではなく、ほのかに香らせることで、より一層魅力的に映る。
    香りが人を惹きつけるのは、それが「相手のためにまとうもの」ではなく、「自分自身を表現するもの」だからだ。

 

 

香りを上手にまとうために
香りは、控えめであればあるほど、美しく記憶に残るものだ。

手首やうなじ、そして耳の後ろ——香りは、体温の高い場所にそっとのせるのがいい。ふと動いた瞬間にだけ、そよぐように香りが広がるくらいがちょうどいい。

「香る」のではなく、「薫る」ように。

また、香水はつけたての香りと、時間が経ってからの香りが異なる。自分の肌の上でどのように変化するのかを知ることで、より自分に合う香りを選ぶことができる。

そして、香りは日常の空気と共にあるもの。朝の光の中で纏う香り、夕暮れ時に寄り添う香り、特別な夜にふさわしい香り——香りに合わせて装いを変えるように、その日の気分や場面に応じて香水を選ぶのもまた、洗練のひとつだ。

 

記憶に残る人になるために
誰かが「あの人は、いつもいい香りがする」と言うとき、それは単に香水の良し悪しを指しているわけではない。その香りが、その人の仕草や話し方、雰囲気と見事に調和しているからこそ、心に残るのだ。

「香りがする人」ではなく、「香りが似合う人」になること。

それは、流行の香水を追いかけることではなく、自分らしさを香りでそっと表現することだ。

言葉では伝えきれないものを、香りが代わりに伝えてくれることがある。あるいは、香りは時に、言葉以上の余韻を残すものかもしれない。

だからこそ、香水をまとうことは、ほんの少しの魔法のようなもの。

たったひと吹きの香りが、あなたという存在を、静かに、深く、誰かの記憶の中へと残していく。






SHO ISHIZAKA/石坂将
フレグランスプロデューサー/株式会社セントネーションズ 代表取締役。
1982年生まれ。学習院大学卒業後、英国ランカスター大学大学院にて修士課程を修了。帰国後フレグランス業界に従事し、数多くの商品をプロデュース。2010年にはプロデュース商品が日本フレグランス大賞を受賞。2012年1月にフレグランスメーカー「セントネーションズ」を設立以降、オリジナルブランド「ショーレイヤード」の企画・開発のほか、独自のネットワークの強みを生かし、あらゆるコンテンツとフレグランスを掛け合わせ、数多くの著名人やスポーツ選手、ブランドとのプロデュース商品を手がける。