
香水を手に取るとき、私はいつも少しだけ背筋を伸ばす。
瓶を軽く揺らすと、液体が光を反射して、まるで朝露が花びらに踊るようにきらめく。その瞬間、私は静かな庭にいる気分になる。そこには、ローズ、ジャスミン、スズラン、幾つもの花たちが咲き乱れ、心地よい風が優しく頬を撫でていく。
フローラル系の香水には、不思議な魔法があると思う。
それは、ただ香りをまとうだけで、その日の私を変えてしまう力だ。朝、急いで家を出る前に軽く首筋に吹きかけると、不安定な気持ちがふっと落ち着いて、自信が湧いてくる。まるで「今日もあなたは美しい」と花たちがそっと囁いてくれているように。
仕事の日には、ラベンダーやスズランの軽やかな香りを選ぶ。
香りが強すぎてしまうと周りの人に気を遣わせてしまうから、ほんのり優しく広がるものがいい。私の中にひっそりとした穏やかさが宿り、忙しい時間の中でも静けさを感じることができる。
一方で、特別な夜は少し違う。
ローズやジャスミンの濃厚な香りを纏うと、普段の自分とは少し違う私が現れる。華やかさと少しの大胆さを香りが引き出してくれるから不思議だ。ディナーの席で、ふと隣にいる人が「いい香りがするね」と微笑む。私はその言葉に少し照れながらも、香水が繋いでくれた特別な瞬間を密かに喜ぶ。
香水は、単なるファッションアイテムではない。
私にとって、それはその日一日の物語を描き出すための小さな魔法の道具だ。
空気中に舞うミストの中をそっと歩きながら、私はその物語の主人公になる。花々の香りに包まれた私が、どんな一日を紡いでいくのか――それは、いつも香りが教えてくれる。
あなたは、どんなフローラルの香りで今日を彩りますか?
SHO ISHIZAKA/石坂将
フレグランスプロデューサー/株式会社セントネーションズ 代表取締役。
1982年生まれ。学習院大学卒業後、英国ランカスター大学大学院にて修士課程を修了。帰国後フレグランス業界に従事し、数多くの商品をプロデュース。2010年にはプロデュース商品が日本フレグランス大賞を受賞。2012年1月にフレグランスメーカー「セントネーションズ」を設立以降、オリジナルブランド「ショーレイヤード」の企画・開発のほか、独自のネットワークの強みを生かし、あらゆるコンテンツとフレグランスを掛け合わせ、数多くの著名人やスポーツ選手、ブランドとのプロデュース商品を手がける。
1982年生まれ。学習院大学卒業後、英国ランカスター大学大学院にて修士課程を修了。帰国後フレグランス業界に従事し、数多くの商品をプロデュース。2010年にはプロデュース商品が日本フレグランス大賞を受賞。2012年1月にフレグランスメーカー「セントネーションズ」を設立以降、オリジナルブランド「ショーレイヤード」の企画・開発のほか、独自のネットワークの強みを生かし、あらゆるコンテンツとフレグランスを掛け合わせ、数多くの著名人やスポーツ選手、ブランドとのプロデュース商品を手がける。