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2025.03.14

フゼアの香りと、時を超えるエレガンス

香水にまつわる記憶は、人それぞれに特別なものだ。
私にとってフゼア系の香りは、古い映画のワンシーンのように、どこか懐かしく、それでいて時代を超えた洗練を感じさせるものだった。

 

初めてフゼアの香水をまとったのは、まだ香水の奥深さも知らない頃だった。
細身のガラス瓶から吹き出したミストは、まずベルガモットの爽やかなきらめきを放ち、すぐにラベンダーのやわらかな風が広がった。
そして、時間が経つにつれ、甘くほろ苦いトンカビーンズとオークモスの渋みが肌の上で溶け合い、まるで古びた書斎のような落ち着いた雰囲気を漂わせていく。
この変化の妙に、私はすっかり心を奪われた。

 

フゼアの香りは、どこか「クラシックな紳士の香り」と形容されることが多い。
実際、19世紀末に誕生した「Fougère Royale」以来、フゼアの香りは多くの男性用香水の礎を築いてきた。
しかし、この香りは単なる「古き良き時代の象徴」ではない。時代が変わってもなお、多くの人を惹きつけるエレガンスを持っているのだ。

 

私がフゼア系の香水を特に好むのは、フォーマルな場に赴くときだ。
スーツの襟元にほんの少しまとえば、まるで一本筋が通ったように心が引き締まる。
フゼアの持つ端正な香りには、香水をつける人の姿勢すら整える力があるように思える。一方で、少しカジュアルなフゼア、たとえば柑橘の軽やかさを強調したものなら、休日のリラックスした時間にもふさわしい。
白シャツにデニムのようなシンプルな装いに、ほんのりと香るフゼアほど、粋なものはない。

 

香りというものは、過去と現在を結ぶ架け橋のようなものだ。
フゼアの香りをまとうと、ふと、幼い頃に憧れた大人たちの姿が思い浮かぶ。
父が身につけていた香水の記憶、映画の中で颯爽と歩く紳士の姿、ヨーロッパの石畳を歩いたときに感じた空気の匂い。
そうした記憶の断片が、一滴の香水の中に溶け込んでいる。

 

だからこそ、フゼアの香りをまとうことは、単なる香りの選択ではなく、一つの生き方の選択のように思えてならない。

時代が変わっても変わらないもの。

洗練と伝統をまといながら、それでも自分らしい香りを探し続けること。

それこそが、フゼアという香りの真の楽しみ方なのかもしれない。



SHO ISHIZAKA/石坂将
フレグランスプロデューサー/株式会社セントネーションズ 代表取締役。
1982年生まれ。学習院大学卒業後、英国ランカスター大学大学院にて修士課程を修了。帰国後フレグランス業界に従事し、数多くの商品をプロデュース。2010年にはプロデュース商品が日本フレグランス大賞を受賞。2012年1月にフレグランスメーカー「セントネーションズ」を設立以降、オリジナルブランド「ショーレイヤード」の企画・開発のほか、独自のネットワークの強みを生かし、あらゆるコンテンツとフレグランスを掛け合わせ、数多くの著名人やスポーツ選手、ブランドとのプロデュース商品を手がける。